Sample List


くるくる
 イクミ
雨ときどきロックンロール
 ウルー×双翼

彼女らの流儀
 いち×粉コロモ

Goodbye our god.
 左都×音羊
コオロギビーツ!
 文月そら
Allegro Tempo giusto
 アルエム×*
世界を謳う、混沌の歌姫。
 ドラゴニズム
風邪の君
 伊音×ヤナギ
空き缶と雨の日の私
 りんしょく
Goodbye Melancholy
        , Goodbye

 匿名希望×占石
ハッピーエンド
 けんごち
Our Song
 kobax×Anemos
Give up the ghost.
 橘
Way Up
 shuta
誰のための歌?
 山鳥
卒業
 鈴木このり×れもたろ
ランニングハイ
 すなふ
simile
 久慈光樹
Not Liar, Not falseNess.
 k.seiru×都岡さち
Ode to Joy
 風見由大×アリ
隣り合わせのサンクチュアリ
 広瀬凌×海底
彼女らの流儀
いち×粉コロモ



「なに、関根。おまえなんか文句でもあるわけ?」
 びく、と肩がふるえる。ひさ子先輩は、さっきあれだけわたしをいためつけておいてまだ説教したりないらしい。目が全然笑ってない笑顔で、先輩がこつこつとわたしにあゆみよる。
「おまえな、アドリブだなんだとえらそうなこといってるけど。そういうのは基礎がちゃんとできてこそだろうが。テンションあがりすぎてかしらないけど、わけわかんない演奏されちゃこっちもフォローできないんだっつうの」
 わかる?とでも言いたげに、ぽんぽん頭をたたかれる。正直、ぐうの音もでない。たしかにわたしのアドリブは、ライブ中にあがりすぎたテンションが制御できなくなり発動するものなのだ。ひさ子先輩は本当に説教の仕方をわかっていない。せめてすこしの逃げ道をつくって、こちらがなけなしの反論をできるようにしておいてもらわないと。でないと、さすがのしおりんだってないちゃうんだぞ!
「はっ、よく言うね。それってつまり、ひさ子が関根なんかのアドリブにすらあわせられないってだけの話じゃない。よくそれでうちのリードギター名乗ってられるもんだ」
 しかし、反論は思いがけぬところからとんでくる。わたしは思わず背後を見た。そこにいるのは、さっきまで味方だったはずの岩沢先輩。ギターのチューニングをしながらのすまし顔。
「……、は?」
 そのつぎにきいたのは、地をはうようなひくい響き。先程とまったくおなじうごきでもういちどふりかえる。するとそこにいるのは、もちろん目の笑ってないひさ子先輩。こんどは唇だって笑ってない。
「きこえなかった? このど素人って言ったんだよ。えらそうに説教なんかしやがって、きくにたえないね」
「は? ふざけんなよ、リーダーのおまえがメンバーに無関心なせいで私がしかたなく汚れ役かってやってんだろ」
「なーにが汚れ役かってるだよ、関根いじめたいだけだろうが」
「だまれよ音楽以外からっきしの能なしのくせに」
 ぐいぐいとふたりともゆずるきもなくおたがいにあゆみよるので、あいだにいたわたしはあわてみゆきちのとなりに避難するしかない。ガンをつけあった先輩方は、火花をちらしながらおでこをつきあわせ、なおも耳をふさぎたくなるような口汚い口論をつづけている。わたしは思いがけぬ展開についていけないながらも、やばいこれはやばいということは本能的に理解する。