Sample List


くるくる
 イクミ
雨ときどきロックンロール
 ウルー×双翼
彼女らの流儀
 いち×粉コロモ
Goodbye our god.
 左都×音羊
コオロギビーツ!
 文月そら
Allegro Tempo giusto
 アルエム×*
世界を謳う、混沌の歌姫。
 ドラゴニズム
風邪の君
 伊音×ヤナギ
空き缶と雨の日の私
 りんしょく
Goodbye Melancholy
        , Goodbye

 匿名希望×占石
ハッピーエンド
 けんごち

Our Song
 kobax×Anemos

Give up the ghost.
 橘
Way Up
 shuta
誰のための歌?
 山鳥
卒業
 鈴木このり×れもたろ
ランニングハイ
 すなふ
simile
 久慈光樹
Not Liar, Not falseNess.
 k.seiru×都岡さち
Ode to Joy
 風見由大×アリ
隣り合わせのサンクチュアリ
 広瀬凌×海底
Our Songs
 kobax×Anemos



「ありがとうございました」
 歌いきった後に軽く礼をする。もちろんと言うと情けなくなるが、拍手をする人は誰もいなかった。演奏が上手くできないのは、気温が急に下がったからだろう。何か今日はついてない。ここに来るまでに変な妄想をしてしまったのも、気分が乗らない原因の一つかもしれない。内容も良くなければ、成果も出ていない。ギターケースの中には、私がサクラとして入れた小銭と、僅かばかりの手入れ金が入っているだけだった。
 今日はここまでにしよう。
 誰にも聞こえない小声なのに、誰も聞いていないけれど私はそう言った。手の冷えが酷い。はぁ、と息を吹きかけても暖かさを感じられない。溜め息だからだろうか。

「……上手いな」

 その声を確かに聞いた。
 思わずギターを片付ける手が止まる。左右を見回してみるが、何人もいない観客はいきなり私がこちらを見たことに戸惑っているようだった。どうしたんだよ、金ならやらねぇぞ、という呟きが聴こえるが、それは私の求めている声ではない。
「す、すみません」
 呼吸を一つ整えてから、慌てて相棒を取り出し演奏を再開する。しかし、自分の声よりもさらに、胸の鼓動が大きい。上手いな、と言われた小さな声が心から消えずに残っている。
 それが、初めて私の歌が褒められた瞬間だった。