Sample List


くるくる
 イクミ
雨ときどきロックンロール
 ウルー×双翼
彼女らの流儀
 いち×粉コロモ
Goodbye our god.
 左都×音羊
コオロギビーツ!
 文月そら
Allegro Tempo giusto
 アルエム×*
世界を謳う、混沌の歌姫。
 ドラゴニズム
風邪の君
 伊音×ヤナギ
空き缶と雨の日の私
 りんしょく
Goodbye Melancholy
        , Goodbye

 匿名希望×占石
ハッピーエンド
 けんごち
Our Song
 kobax×Anemos
Give up the ghost.
 橘
Way Up
 shuta
誰のための歌?
 山鳥
卒業
 鈴木このり×れもたろ
ランニングハイ
 すなふ

simile
 久慈光樹

Not Liar, Not falseNess.
 k.seiru×都岡さち
Ode to Joy
 風見由大×アリ
隣り合わせのサンクチュアリ
 広瀬凌×海底
simile
 久慈光樹

「あんたのプレイは媚びてる」

 初めは、何を言われたのか解らなかった。
 いつも通りの教室での練習。通しで三曲ほどやり終えて、ペットボトルで喉を潤しているときにその言葉は唐突に背後から発せられた。
「へ?」
 我ながら間抜けな声が出たと思う。何事かと振り返るとそこにはじっと腕の中のギターを見詰めたままのひさ子さん。
 ひょっとして独り言だろうかしら、プレイ直後で酸素が十分に行き渡っていない脳でぼんやりとそんなことを考えていると、彼女は伏せていた顔を上げ、いつもの無表情であたしの目を見てきっぱりと言った。
「ユイ、あんたのプレイは聞き手に媚びてる」
「ひさ子さん!」
 あのマイペースな関根さんが悲鳴のような声で間髪入れずにそう叫んだのだから、ひさ子さんの言葉は客観的に見ても酷い物言いだったのだろう。
「言い過ぎだよ、ひさ子さん」
 入江さんも普段からは想像もつかないような強い口調で嗜める。普段とはまるで逆の構図だった。

 徐々に。
徐々に、ひさ子さんがあたしに対して放った言葉が、供給される酸素で活性化した脳神経を伝って意味ある言葉として認識され、把握され、理解される。

 媚びている。
 歌が、ではなく。
 演奏が、ですらなく。
 プレイそのものが。
あたしのプレイそのものが聞き手に対して――媚びている。

 ゴン、という、笑ってしまうような鈍い音。
 関根さんと入江さんの妙にハモった悲鳴。
 そして、右の拳への激痛。

 あたしは無言のまま、ひさ子さんの顔面を殴りつけていた。