Sample List
くるくる イクミ 雨ときどきロックンロール ウルー×双翼 彼女らの流儀 いち×粉コロモ Goodbye our god. 左都×音羊 コオロギビーツ! 文月そら Allegro Tempo giusto アルエム×* 世界を謳う、混沌の歌姫。 ドラゴニズム 風邪の君 伊音×ヤナギ 空き缶と雨の日の私 りんしょく Goodbye Melancholy , Goodbye 匿名希望×占石 ハッピーエンド けんごち Our Song kobax×Anemos Give up the ghost. 橘 Way Up shuta 誰のための歌? 山鳥 卒業 鈴木このり×れもたろ ランニングハイ すなふ simile 久慈光樹 Not Liar, Not falseNess. k.seiru×都岡さち Ode to Joy 風見由大×アリ 隣り合わせのサンクチュアリ 広瀬凌×海底 |
ランニングハイ すなふ ユイは、走っている。いや、ほとんど歩いていると表現すべきだろうか? どんどん喉が狭まってくのをユイは感じている。苦しさに、少しずつ下がっていく視線。彼女の視界には、グラウンドと、両脇に描かれた白いラインくらいしか入らない。そして、たまに追い抜いていく足音。ざっざっと、背後からそれは迫ってきて、まったくペースを乱さずに、彼らは追い抜いて、影になって、最後に視界から消えていく。勝負していたら何周遅れにされていたのだろうか。だいたい、あたしは今、何周走ったのだったっけ。 部活してるような人たちって、生きていた頃は憧れだったな、と彼女は思い出す。この世界にやって来ても、やはりそう感じる。校舎の窓から見てる彼らは、本当に青春していて、眩しかった。でも、見るのと実際にやるのは大違いだ。ちょっと走っただけで、こんなにも苦しい。あんなに機械みたいにずっと同じことを繰り返して、全然タフで、彼らは、どれだけの時間を走る事に費やしてきたのだろうか。絶望的な差だ。 胃からせり上がってくるものをユイは感じる。それを飲み込む。彼女は限界を感じている。あーもう、休むっ! と思う。もう、絶対に止まる絶対に――でも、せめて、次のゴールラインを越えたら。もう一周したら。そこまでは――頑張る。頑張ろう。 そう決めて、彼女は、大きく両腕を振った。こぶしを握る。彼女の脳裏には、この世界に最初にやってきたときに聴いた歌が流れている。 あたしは、頑張るって決めたんだった。 背を伸ばし、スピードを上げる。前を見据える。 ゴールはまだ、ずっと先だ。頑張る。折れてしまいそうな心を、ユイは少しだけ残っている気力で叱咤する。 |