Sample List


くるくる
 イクミ
雨ときどきロックンロール
 ウルー×双翼
彼女らの流儀
 いち×粉コロモ
Goodbye our god.
 左都×音羊
コオロギビーツ!
 文月そら
Allegro Tempo giusto
 アルエム×*
世界を謳う、混沌の歌姫。
 ドラゴニズム
風邪の君
 伊音×ヤナギ
空き缶と雨の日の私
 りんしょく

Goodbye Melancholy
        , Goodbye

 匿名希望×占石

ハッピーエンド
 けんごち
Our Song
 kobax×Anemos
Give up the ghost.
 橘
Way Up
 shuta
誰のための歌?
 山鳥
卒業
 鈴木このり×れもたろ
ランニングハイ
 すなふ
simile
 久慈光樹
Not Liar, Not falseNess.
 k.seiru×都岡さち
Ode to Joy
 風見由大×アリ
隣り合わせのサンクチュアリ
 広瀬凌×海底
Goodbye Melancholy , Goodbye
 匿名希望(29、リーマン)×占石



 ひさ子がアコースティックギターのチューニングをしている。ピックをくわえ、爪で弦を弾いている。私は床にしゃがんで手の中のハーモニカを弄んでいた。放課後だった。机に座った入江はタンバリンを軽く動かしている。イメージを膨らませているようだった。
 関根は教室の隅で不貞腐れていた。
「おかしいじゃないですか。なんで私だけ楽器じゃないんですか」
「誰かチラシ配るやつが必要だろ。大事な仕事じゃないか」
 目をギターに向けたまま、ひさ子が言う。ペグをつまむ手が細かく動いていた。意識はきっとそちらへ集中している。
「それにしたって、なんでゴミ箱……」
 関根の背中にあるのはゴミ箱代わりに使われていたポリバケツだった。一部をくりぬいて、ストラップをつけて背負えるように改造したものだった。小柄な体躯に合わせると、やけに大きく見えた。
「関根、目立ってるよ」
 私がそう言うと、関根はぷいっと顔を背けた。指で床をとんとんと叩いている。私は苦笑して、ひさ子を見やった。ひさ子はちょうどチューニングを終えたところで、ピックで六本の弦を叩くようにして音を出していた。
 ひさ子の「オッケー」という声に、入江と私が立ち上がる。目を見合わせて、教室前方のドアへ向かう。私は足を止め、「関根」と声をかけた。渋々といった緩慢さで関根が腰を上げた。
 私は正面を向き直る。ドアにはめ込まれたガラスにうっすらと自分の顔が映っていた。髪の毛が短くなっている。数日前、ひさ子に切ってもらった。
 私は掛け時計を確認する。予定通りの時間だった。
「よし。行こっか」