Sample List


くるくる
 イクミ
雨ときどきロックンロール
 ウルー×双翼
彼女らの流儀
 いち×粉コロモ
Goodbye our god.
 左都×音羊
コオロギビーツ!
 文月そら
Allegro Tempo giusto
 アルエム×*
世界を謳う、混沌の歌姫。
 ドラゴニズム
風邪の君
 伊音×ヤナギ
空き缶と雨の日の私
 りんしょく
Goodbye Melancholy
        , Goodbye

 匿名希望×占石
ハッピーエンド
 けんごち
Our Song
 kobax×Anemos
Give up the ghost.
 橘

Way Up
 shuta

誰のための歌?
 山鳥
卒業
 鈴木このり×れもたろ
ランニングハイ
 すなふ
simile
 久慈光樹
Not Liar, Not falseNess.
 k.seiru×都岡さち
Ode to Joy
 風見由大×アリ
隣り合わせのサンクチュアリ
 広瀬凌×海底
Way Up
 shuta

 4小節分の試奏を終えた岩沢が言った。
「ルート音クリシェしてもストロークだと伝わらない?」
「アルペジオなら効果的かもしれないけどあんたは普通にコードかき鳴らしてればいいよ。どちらかっていうとそれ関根の仕事」
「ピックアップリアに切り替えてパワーコードでがーがー聞かせる先輩を期待している人多いと思います。ゲイン右に捻りきって直アンプで『これってrockだよね』って感じでお願いします」
「しおりん、ドラムのあたしからも適当に聞こえるよ」
 しかし関根は入江の懐疑もよそにして、人差し指をちっちっと振ってもっともらしい言葉でまとめようとした。
「イギリスの人も言ってたよ? 一緒に進んでいくばかりじゃなくてメンバー内の誰かが強いアイデアを持ってるときはその人に主導権を握らせてとりあえず音を出してみた方がいいって」
 ひさ子は間髪を容れずベクトルの修正にかかった。
「その理屈と今の話の流れだと、岩沢の進行で一度合わせてみろってことになるな。てかイギリスの人って誰だよ」
「忘れましたけど……てそれより今のひさ子先輩の言い方だとあたし無視の岩沢先輩ぎゅいぎゅいじゃない方面じゃないですか」
「とりあえずこの間リハでコーダ飛び間違えたやつは黙っとけ」
「うっうっ、creepのサビ部分のトレモロ弾いてください」
「なんかまたいきなりな要求だな。意味分かんないぜ。あとで岩沢にRichie KotzenのCHANGEでも奏でてもらえ――」
 と岩沢当人の頭上を越えて交わされていた会話の途中、学習棟A棟の空き教室に3弦5弦を用いた激しいオクターブカッティングが響き渡った。ひさ子は驚きをそのまま呟きにしてしまった。
「うわ、fireかよ……」
 いい加減もう始めようぜという岩沢の主張がBPM168の速さで展開された。ブラッシングを挟んでリズムを刻みその合間に喉を痛めないよう気だるげに歌う。ミッチのドラムまで聞こえてくるかのようなその独奏にやや壊れ気味になりながら入江が嘆いた。
「あのタイム感はあたしからは、あたしからは出ないですっ」
 スティックを握り締めて教室から駆け出してしまった。関根はつい先ほどまで落ち込みかけていたようには見えないくらいに、きらきらと聴き浸ろうとしていたけれど、入江が不憫に思えてならなかったので後を追いかけていた。
「あたしは好きだよ!! Alchemyのサビ前のフィルインも、お客さんを置いていかないジャストなドラミングも!」